第8章 とまどいながら
「…ねぇ、翔ちゃん」
「なぁに?」
「もしさぁ、あのふたりが付き合ってたら、俺と付き合ってよ」
「相葉くん?」
「だってさぁ、近くであのふたりのこと見てるの辛いよ…
俺ひとりで立ち直る自信ない…」
相葉くんの顔を見ると捨てられた子犬のような目で俺を見てた。
そんなこと本気で考えてる訳じゃないんだろうけどね…そんな目で見られたら『嫌だ』なんて言えないよ…
「…うん、いいよ」
笑顔で答えてあげた。
「やっぱり優しいね~、翔ちゃん大好き~」
相葉くんが勢いよく俺に抱きついてきた。じゃれつく姿はまるで大型犬。子犬からいきなり成長したな。
勢いよく振ってるしっぽまで見えそう。
背中をポンポンと叩いてあげてたら楽屋のドアが開いた。
「…おはようございます」
ニノに続いて智くんが入って来た。
「…おはよ」
「おはよう、ニノ、智くん」
少し機嫌の悪そうなニノと、いつもに増してぼ~っとした智くん。
「なに、昨日ふたり一緒だったの?」
ふたりが入って来たことに気がついた松潤がヘッドフォンを外しなから聞いた。
「ええ、昨日大野さんに付き合わされまして…
今日は寝不足です」
荷物を置くとゲームを取り出した。
「ははっ、ニノはゲームで徹夜慣れてんじゃないの?」
「ゲームはいくらでもできますけど大野さんの相手はキツいんですよ…
しつこいし…」
「…そんなこと言うなよ」
早速ソファーに横になってる智くんが寂しそうに言った。
「ほんとの事でしょ?
少しは相手をする私のことも考えて貰いたいですね?」
「…ごめん、次からは気を付ける…」
そう言いながら智くんはうとうととしはじめた。
「…まったく、もう…」
智くんを見るとニノは苦笑いして、ゲームを始めた。
「翔ちゃん…」
相葉くんが小さな声で話しかけてきた。
「今日の夜、空いてる?」
今にも泣き出しそうな瞳。
「空いてるよ」
「じゃあ、家来てよ…」
「いいよ」
ニコッと笑って、ポンポンと相葉くんの頭を撫でた。