第6章 君のために僕がいる
<大野サイド>
楽屋に戻ると我慢していたせいか翔くんの震えがさっきより酷かった。
それに表情も暗く落ち込んでいるようだ。
いつもだと回りに気を使い無理に笑顔を見せるのに、今日はそれも出来ないみたいで…
改めて自分が野郎共からどういう目で見られているのか分かったんだろう。
マンションに帰るとポツリと翔くんが話し出した。
「俺が悪いんだよね…
俺に原因があるんだ…」
「翔くんは悪くないよ?
やっていいことと悪いことがわからないあいつらが悪い
欲しいからって何をしてもいい訳じゃないんだから
責めるべきなのは相手のことを考えず好き勝手やってるあいつらだ…」
翔くんを励ましたくてそっと抱きしめた。
「智くん…」
「翔くんが責任感じる必要ない
やつらの手段が狡いだけだよ」
笑顔でそう言ってあげた。
「智くん…もっと強く抱きしめて…」
「翔くん?」
「全部…忘れたいよ…
あいつらにされたこと…全部…」
全部って…俺が知っていること以外に何かあるのか?
「翔くん、言うの辛いかもしれないけど、忘れたいことってなに?なにをされたの?」
翔くんは俯いてしまった。
「……キス、された」
「えっ?あのスタッフに?」
小さく頷く翔くん…
俺が到着する前にアイツそんなことを!
翔くんが今までひとりで抱え込んでいたのかと思うと何の為に側についていたのかと情けなくなる…
翔くんを抱く腕に力を込めた。
「翔くん、ごめんね?
俺翔くんの傷が癒えるように翔くんが望むこと全部してあげたかったのに何もしてあげられてないね…」
「そんなことない!
智くんがずっと一緒にいてくれただけでどれだけ助かったか…
智くんが俺のことなんとも思ってないってわかってたけど、それでもこの一ヶ月一緒にいてくれて嬉しかった…」