第6章 君のために僕がいる
「え?なんですって?」
「だから俺と翔くんは付き合ってないよ」
「だってあんな…」
言葉が出ない。
翔さんが大野さんを特別な存在と思っているのは嫌と言うほどわかった。
一ヶ月間ほぼ毎日一緒に夜を過ごしてきてそれでも何もないなんて…
このおじさん、どんだけ我慢強いんだよ。
「なんで?我々に気を使ってるんですか?」
「違うよ、翔くんは俺のことそういう対象で見てないよ」
「は?」
なに言ってんだ?確かにあの時は翔さんの大野さんに対する気持ちが愛情なのか信頼なのかわからなかった。
でもこの一ヶ月の翔さんを見てればわかるだろ?
あの艶は恋をしてるとしか考えられない。
ならば相手はずっとそばにいる大野さんしかいないじゃないか…
この人鈍感にも程がある。
翔さんが気の毒だ…
「大野さん、なんで大野さんが対象外なんですか?」
「あの時、翔くんに触れられたの俺だけじゃん
俺は恋愛対象として見られてないんだよ」
逆だよ…好きな大野さんだから触れて欲しかったんだ。
最初から翔さんは大野さんに忌々しい記憶を消して欲しいと望んでいた。
だからキスマークを消してって頼んだんだ。
大野さん以外じゃ駄目なのに…
なんでわかってあげないんだよ。