第6章 君のために僕がいる
撮影を再開すると翔さんの体に触れることを躊躇っていた俺に
「もう大丈夫だから」
って笑い掛けてくれる。
そっと手を乗せると一瞬揺れたけどさっきみたいに震えることはなくて無事撮影を終えることができた。
でも、それは翔さんが無理をしていただけだった。
控え室に戻った翔さんはやはり顔色が悪くて…
俺に気を使っているのか何ともないフリをしてるけど、どれだけ翔さんを見てきたと思ってるの?
そんなのバレバレだよ…
翔さんが着替えをしている間に大野さんと小声で話す。
「大野さん、翔さん無理してますよね?」
「やっぱりバレてるか…」
大野さんが苦笑いをした。
「そりゃわかりますよ
何年翔さんのこと見てると思ってるんですか」
「そうだよな…」
「朝、首の跡あまり気にしてないようだったの立ち直ったかと思ったんですけど…」
「跡を気にしてない?」
「ええ、昨日のこと思い出すかと思ったので、『私がコンシーラー塗りましょうか?』って言ったら『自分でやるから』って
だから強い人だなって思ったんですけど」
「それはないよ…
あの痣…昨日、気持ち悪いから消してって」
大野さんは悲しそうな目をした…
「気持ち悪い?消して?
そんな風には見えませんでしたけど?
しかもあの痣、思ったより濃く残ってましたね?」
「あぁ、あれは俺が上からつけ直した」
「はっ?」