第6章 君のために僕がいる
いつも通りに撮影をこなす翔さん。
さすがだな、なんて感心していたけどカメラマンの指示が入り状況は一変した…
「じゃあ、次もう少し近づいてみましょうか」
の声に俺が翔さんの肩に手を置いた。
翔さんの動きが止まった直後に小さく震えだした。
「翔さん?」
「ご、めん、ニノ、一度、手、離し、て…」
みるみる内に顔色が悪くなる翔さんを見て慌てて手を離す。
大野さんがスタッフに声を掛けてこちらに駆け寄ってきた。
「翔くん、大丈夫?」
「さ、としくん…」
大野さんを見る翔さんの目は不安そうで…
「ちょっと待ってて
ニノ、翔くんお願い」
再びスタッフの方に走って行く。
少し話してこちらに戻ってきた。
「翔くん、一旦休憩入れて貰ったから控え室で少し休も?」
翔さんの肩を支えるように歩きだした。
「ニノ、行くよ」
俺でも駄目なんだ…
大野さんに寄りかかるように歩く翔さんの後ろ姿を見て傷の深さを知りショックを受けた…
控え室に戻ると大野さんは翔さんの隣に座り背中を擦る。
翔さんは大野さんの肩に額をつけ大きく呼吸を繰り返した。
そんなふたりの姿に俺は何も言葉を掛けられなくて静かに見守ることしかできなかった…
暫くすると落ち着いたようで、顔をあげた。
「ニノ、ごめんね」
微笑んでくれたけど、かえって痛々しくて…
俺に気を使ってる場合じゃないのに。