第5章 Don't you get it!
「智くんはいるの?気持ちわかるって…」
「いるよ」
優しく微笑む智くんを見て、相手のことがとても好きなんだなと思ったと同時に胸がギュっと痛んだ…
「…そうなんだ」
「で、翔くんは?」
「…わからない」
「わからない?」
「…うん…」
今日何度も智くんに触れてドキドキした…
ドキドキして…恥ずかしくて…
でも触れた部分が…心地よくて…
色々な感情が一度に押し寄せて来たから自分でも理解しきれなくて…
「そっか…」
それ以上智くんが聞いてくることはなくて
「少し歩こうか…」
ゆっくり歩き出した智くんの横に並んで歩いた。
そうしたら智くんの手が俺の手に触れてそのまま握られた。
その温もりが嬉しくて…
俺も握り返した。
繋いだ手が熱くて…
まるで心臓が手に移動したみたいにドキドキして…
そこに全ての神経が集中してる…
ふたり何も会話をすることなく歩き続けた。
「ちょっと冷えてきたね?そろそろ戻ろうか?」
「…うん」
繋いでいた手が離れていった。
俺、人の温もりに飢えてるのかな…
無償に寂しくなって…立ち止まった。
「翔くん?」
「…もう少し…」
小さな声で呟いた…
「えっ?なに?」
智くんが近づいて来て顔を覗き込む。
「もう少しだけ、手繋いでていい?」
「喜んで」
智くんが嬉しそうに微笑んで今度は指を絡ませギュっと手を握ってくれた。