第5章 Don't you get it!
散歩と言ってもその辺をうろうろすることは出来なくて、季節外れの人気のない浜辺にたどり着いた。
智くんの後ろをついて歩いていたら、智くんが立ち止まって
「大丈夫?」
って、心配そうに聞いてきた。
「えっ?」
「さっきの…」
思い出して顔が熱くなる。
「…だ、大丈夫!」
「ふふっ、また顔赤くして
可愛いなぁ」
今日何度言われたかわからない『可愛い』なのに慣れることなくまた熱くなる。
「智くんはなんで平気なの?」
「なにが?」
「えっと、さっきのふたり…」
「あぁ、まぁ、気持ちはわかるから」
「気持ち?」
「そりゃ、好きな人といれば触れたくなるでしょ?」
そうだよな、さっきは突然のことでビックリしたけど愛し合ってれば当たり前のことで…
「…うん」
俺も同意した。
「翔くんはそう思える人いないの?」
触れたい人?
ここ数年は仕事が忙しくて恋愛に興味がないと言うか面倒くさくなってて、人の温もりから遠ざかってた。
プライベートで人の体温を感じたのは今日久しぶりで…
だからドキドキするのかな…
車で智くんの肩に寄りかかっていた時も、手が触れた時もお風呂で抱きしめられた時も心臓がおかしくなったのかと思うくらいドキドキした…