第5章 Don't you get it!
<翔サイド>
体を洗いお風呂に浸かる。
できるだけ海が近くに見える場所に移動し、肘をついて海を眺めた。
「はぁ~、綺麗だなぁ~」
智くんも隣に移動してきた。
「ほんとだね?」
そう言った智くんを見ると海の方を見てはいなくて…
「…あの、智くん?海はあっちなんだけど?」
俺は海の方を指差した。
「うん、わかってる」
こっち見て微笑まれても…
「海、見ないの…?」
「うん」
「…なんで?」
「海より見たいものがあるから」
っ⁉やっぱり今日の智くんいつもと違う!
「あの…」
「なに?」
「…距離…近くない…?」
さっきから徐々に智くんが近づいてきてる…
「そう?」
なんて笑って惚けてるけど絶対わかってやってる!
少しずつ移動しお風呂の隅に追い込まれた。
これ以上行き場がなくて
「そろそろ出よっか?」
逃げる様に立ち上がったら智くんに手を引かれバランスを崩した俺は智くんの胸に倒れこんだ…
「…ごめんっ!」
慌てて体を起こそうとしたら智くんに肩を押さえ込まれた。
「なんで翔くんが謝るの?
俺が引っ張ったんだよ?」
「…智くん…放して…」
今、俺智くんに抱きしめられてるんだよね…
「翔くん、震えてるよ?…怖い?」
「…え?」
顔をあげて智くんを見た。
哀しそうな智くんの瞳が目に入った。
「俺のこと、怖い?」
…怖い?…智くんが?
「…怖く、ない…」