第1章 Two
「最後はキスシーンいきます。
勿論フリで大丈夫ですよ。
大野さん、上手くお願いしますね」
「はい」
短い返事をする俺。
どう誤魔化そうかと立ち位置を考えていたら
「智くん、大丈夫?」
翔くんが心配そうに俺を見る。
「男とのキスシーンなんて、フリでもいやだよね?
ごめんね…」
少し哀しそうな顔。
「俺は全然は大丈夫だよ。
翔くんの方がいやでしょ?」
「ううん、俺も大丈夫。今までに何回かしてるし。
今回はフリだしね」
そうだった。翔くんはTV番組の中で何度かしてたんだった。しかも、相葉ちゃんともしたんだ。
あの時も笑ってはいたけど、胸がいたんだのは覚えてる。ということは、あの頃から既に翔くんの事が好きだったのか…
「準備いいですか?
お二人のタイミングでいいですよ」
俺は翔くんの腰を左腕で抱き締め、左頬に右手を添え、口元を隠した。
顔を近づけると、翔くんは瞳を閉じた。
フリでやめるつもりだった、でも間近で見る翔くんの艶めく唇に心を奪われた。
今まで何人の男が触れてきたんだろう…ふっくらとしたこの唇に。
そう思ったら止まれなかった。
翔くんの柔らかい唇に自分の唇を押し付けた。
狡いよなぁ…
撮影中だから翔くんが逃げないことを分かっててキスをした。
一瞬体が震えたけど、そのまま受け入れてくれている翔くん。
仕事を最優先させる翔くん。
そんなところ凄く尊敬するよ。