第15章 解かれた封印と心
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再び時は、シンドリア。
神妙な面持ちで紫水は語りだした。
「私と蒼は、双子の姉弟です。私がそれを知ったのは、私が大人になり時渡りをしてから。身の回りに異変を来たし、原因を探っていると…声が聞こえたんです」
『…声?』
「"どこ…どこにいるの?"
それが私を探している声だとは最初はわかりませんでした。幼い子供が親を探すような甘えた声で…それから私がこの姿になるまで声は度々聞こえていました。私と同じように声も子供の声から大人びた声に変わっていったんです。」
目を閉じ、あの頃のことを思いだしている紫水。その表情は次第に強張っていき、ジャーファルが握る手にも力が込もる。
『…その頃に気付くべきだったんです』
「その時、弟は君の存在を知っていたのか?」
『はい。私達が双子であることも、自分が禁忌であり親がどうなったかも…全て育ての親に聞いたそうです』
育ての親。紫水の幼い頃の、その人は既にこの世にはいない。しかし、優しかった。良いことも悪いことも、全部教えてもらった。
『しかし、その育ての親というのが問題で…』
「問題とは?」
『…この世に善があるならば、悪もまた然り。私が善であるならば、彼は悪なのでしょう。
蒼の育ての親は、悪魔です。鬼とも言える。
欲しいものは力付くでも奪う。人間の命をなんとも思わない。殺生を楽しみ、奪うことを喜びにしてしまっています。
私の本当の両親。つまり産みの親は既にこの世にいません。いないというのも神としてはおかしいのかもしれませんが…
私達神の世界では、男性より女性の方が大切にされてきました。双子で産まれてしまった私達は、災いの始まりだと言われ私は無理矢理に天界に連れていかれ、蒼は捨てられたそうです』
「しかし、生きていた…そう言うことだな」
『はい。悪魔が産まれて間もない蒼を育てたそうです。本当は気まぐれだったのかもしれません。
こんな小さな"モノ"がどんな風になるのか
きっと、好奇心だったのかも』
「あなたは、そう思ったんですか?」
ジャーファルは、紫水の横顔に問いかける。しかし、答えはない。