第14章 高揚と拒否
その後、昼過ぎにスパルトスの船によって救出され無事にシンドリアに帰ってきた紫水とジャーファル。
すぐにシンドバッドのもとに向かう。
『無事で何よりだった。ジャーファルが海に落ちたと聞いた時には、胆が冷えた』
「仕事をしてくれる人がいなくなるから?」
『でしょうね』
『お前ら…帰ってきて早々に俺に冷たくない?』
『普段の行いです』
「まぁ、冗談はこの位にして…状況が変わったの。あっちの世界で起きていることが私の考えている事なら、この世界での事も説明できる」
シンドバッドは、何の事だと説明を求めた。紫水は、下を向き拳を握り締めている。
『大丈夫です。ほら、そんなに手を握り締めてしまったら血が出てしまいます。私の手を握っても構いません。そばに居ますから、ゆっくり話しなさい』
ジャーファルのそんな行動に驚いたのは、紫水だけではなくシンドバッドも同じであった。しかし、紫水は以前のように拒否するのではなく、そっとジャーファルの手を握り返した。
『ちょ、ちょちょちょっと!話す前に一応聞く。二人はそういう関係なのか?』
「は?じゃ、一応言っておくけど…"友達"に手を握ってもらうことって可笑しいですか?」
『友達って感じじゃないだろ』
『うるさいですよ!紫水の話を黙って聞く!』
この時、ジャーファルは内心すごく嬉しかった。助ける相手から友達に昇格していたからである。それを悟られまいと、話を戻したのだ。本当は、口がにやけていないか心配で、下を向くか口元を隠したい。手を自然に握れるようになったのも相まってそう感じているのかもしれない。