第14章 高揚と拒否
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次の朝。
目を覚ますと、何故か視界が真っ白で動こうとすると頭上から声が聞こえた。
『起きましたか?』
「……へ?」
それがジャーファルさんだと気がつくのには、数日前と同様に数秒かかった。
「ジャ…ジャーファル、さん。何故、私は貴方の懐で寝ているんでしょうか?」
『私が抱き寄せたからに決まってるじゃないですか』
ふ、不覚。
いつもなら、気配だけで気がつくのに…これは、疲れてたから…ということにしたい。
『夢は』
「?」
『夢はみませんでしたか?』
そっか。シンドリアで、ジャーファルさんの部屋のソファーで寝たから
「…はい。お陰様で。っていうか、もう大丈夫ですから離して下さい」
『ダメです。もう少しこのままで』
「や、あの」
『温かいですね』
「そりゃ、生きてますからね」
『紫水が、こうして生きてくれている事を嬉しく思いますよ。貴女がいなければ、私は海で助かることもなかった』
「…でもね、ジャーファルさん。私がいたから、大変な事が起きてるんですよ」
すると、ジャーファルさんは少し離れて、ふーと息を吐くと…いきなり、
『いつまでも、ウジウジしてるんじゃありません!!』
頭にチョップされた。っていうか、スッゴく…痛い。
「い…痛い」
『おきたことを後ろ向きに考えても仕方ないんです!それを、どう変えるかじゃないんですか!?』
「…そうですけど…」
『紫水。あなたは…弱いんですか?』
今まで、そんなこと考えること少なかった。
確かに私は、弱い。特に精神面であの人がいなくなってから…
「…そうです。誰よりも寂しさや孤独を知ってる。だから、皆には普通の…ごく普通の幸せを感じてほしい。私には、"普通"はなかったしこれから先もないと思います。前の世界では、"普通"を求めてしまった。そのせいで…多くの人を巻き込んでしまって立場を失い、きっと私のことも恨んでる。会うのもこわくて、でも会いたくて…どうしたらいいのか」
『ほんとーに、あなたは馬鹿ですね』
『会いたければ、会いに行けばいいでしょ。けじめをつけないと紫水はいつまでも進めません』
「……」
『また、チョップしますよ!!』
「や、やだ!」
『なら、シンドリアに戻って話して落ち着いたら、会ってきなさい』