第11章 苦しみと推測
『…なんと言うか…寂しいところですね』
それに対して、紫は目を見開いてジャーファルを見た。
【…変わってるな】
『?』
【寂しいところですね、なんて…
普通なら、そんなに偉い人なのか!?って言うヤツが多い】
『だって、人間は恋愛感情があるから幸せだと思うのに…
神様は、それを否定するんですか』
【そんなもんなんだよ。天界は…食べなくても生きていける。年だって、普通の人間の何十倍も生きてる。威張り腐ってるだけさ】
自分の主がいた世界を、意外にも冷たく語った自分。
未練などは、一切感じなかった。
『紫は、そんなに前から紫水と一緒なんですか?』
【…私は…主の一部だ】
『一部?』
【私は、主の精神の一部なんだ。だから、意識を共有することも、感情を読み取ることも出来る】
『と、言う事は…昔は、紫水の中にいたんですね』
【そうだ。その精神の一番強い部分を切り取って、外に出してくれた。私のご主人様だ。
しかし…】
言うべきか、迷った。
主が嫌がる事を、言えば…傷ついている主の傷口に塩を塗り込むようなことだ。
それでも、アイツがこの世界にいる可能性があるなら…
話しておくべきだ。
『?』
【今は、感情を読み取る事が出来ない】
『…何か、あったんですか?』
【100年位前からだ。ある事件から…心を閉じてしまったんだ】
『ある…事件…』
【しかし、これは主が話すべき事だ。私は、これ以上は言う事は出来ない】
『…そう、ですか…』
これ以上は、私が話す事は出来ない。
主を傷ついてる事は、私にも影響があると言う事…。
結局は、自分が傷つくことが怖いんだな。私は…