第1章 .袖振り合うも多生の縁
(さて、どうしたものか……)
高校入学前、張り切ってバッシュやボールなどを揃え、入学式まで眠れない夜を過ごしていた彼女にとっては仮入部すら受け入れられないというのは結構心にくるものがあった。
(仮入部の時点でバスケ道具全部持ってくるほどやる気がある1年ははたしてアタシ以外にいるんだろうか……)
しょうがないので学校から家に帰るまでの道にある小さなストバスのコートでフリースローでもやることにした。
(晩御飯何にしよう…あ、これからはここで毎日練習しながら晩御飯のメニュー考えようかな)
バスケ部以外入部する選択肢の無かった彼女は呑気にそんなことを考えていた。
(お、また決まった。
ほらアタシ初心者の割に結構上手いじゃん。
あのお姉さんいつか後悔するといい……!)
(日も暮れだしたしそろそろ買い物して帰るか……)
時間を忘れ熱心にフリースローだけ練習していたので、辺りはすっかり夕焼け色に染まっていた。
(ずっとやりたかったバスケがやっと出来たのに、なんでこんなに悲しいんだろう)
少女の瞳に映る夕焼けは、何だか少し霞んで見えた。