第4章 .下剋上
「どーゆーコトっスか?ひかりっち」
「??」
どうやら火神のタッチは2人には見えなかったようだ。
「前半に比べて火神のジャンプが高くなってきてる。
今のシュートがリングに触れたのも火神の指先が緑間のシュートに触れた証拠。
次、もしくはその次のシュートを火神は止める。
アタシには視えた。」
「へ〜!ひかりっち"目"もいいんスね!!」
「本当、良く見えたな…」
「……アタシの取り柄はこの"眼"しかないんで」
アタシの行った通り、次に緑間が打ったスリーはリングに当たったが秀徳のキャプテンの人に上から無理矢理入れられてしまった。
「おしいっ!」
(惜しいどころじゃないよバカ)
今のタッチは誠凛の逆転……いや、下剋上に繋がる大きな1歩だ。
緑間のスリーを止めることは誠凛にとって奇跡みたいなものなのだ。
(ヤバい…こんなにバスケが楽しいのは久しぶりかもしれないっ)
いつの間にか膝の上に置いていた握り拳も、胸の前にきていた。
(何年ぶりだろう……こんなにドキドキするバスケはっ)
中学生の時、後悔した。
なんで自分はバスケを離れて、崩れていく仲間たちを放って、一人で後悔して、屋上で目標を叫ぶ姿に感動して、でもみんなに合わせる顔がなくて、だからバスケで有名な学校には入らなくて、自分の罪滅ぼしのためだけにプレーヤーになろうとして、でもなれなくて
それでも諦めきれずにまだバスケに縋ってる。
(バカだ、ホントのバカはアタシだ。)
なんで今まで気づかなかったのか、IH予選1回戦から誠凛の試合全て見てきて、別に応援しに来たわけじゃない、とか変な言い訳作って
(アタシはやっぱりバスケ好きだ。)
緑間と火神のマッチアップ。
ボールを持っているのは緑間で、スリーを打とうとしていた。
緑間はシュート体制に入り、火神もジャンプフォームに入った。
(止めてっっ!!)
火神の手は、緑間のシュートを捉え、ブロックに成功した。
「黄瀬、アタシ急に思いついた。」
「なんスか?ホント急っスね。緑間っちの対策っスか?」
「ある意味そうかもしれない。
あのね、ホントは前から考えてた。」
「アタシ、誠凛のマネージャーになる。」