第4章 .下剋上
正邦との試合が終わり、秀徳との試合をするまでに間が空いた。
「今更っスけどひかりっち髪切ったんスね、似合うっスよ」
「どうしたの急にキモイ」
「ヒドっ
だって中学の時は腰まであるロングだったじゃないっスか!」
黄瀬の言う通り、アタシは高校にあがる前の春休みに髪を切った。
腰まであった髪は今や肩につかない位になっている。
「それに誠凛の制服も似合ってるっスよ
可愛いっス!」
「ダマッテ」
「ハイっス!」
そう言って黄瀬はニコニコしながら黙った。
(ウザ)
可愛いとかあまり褒められ慣れていないアタシはこういうのにめっぽう弱い。
確かに自分が目立つ存在だということは昔から重々承知だ。
髪は白いし瞳は紫だし。
そんなアタシが珍しいのか奇妙なのかそれとも近寄り難いのか、自ら近寄ってくる人はまず居らず、学校ではいつも1人だった。
でもバスケと出会ってからは少ないけれど友達が出来たし、日本に戻ってからもヤケに頭がカラフルな人達が居たので1人になることは無かった。
話は逸れたが、とにかくアタシは褒められるのが苦手だ。なんて返すのが正解かわからないし、お世辞だった場合喜んでしまったら恥ずかしいからだ。
「お世辞とかイイから」
「お世辞じゃないっスよ!ね、笠松先輩も可愛いと思うっスよね!」
「っは!?俺!?!?……いや、別に……っ」
突然ふられた笠松さんは困ったように口元に手を当ててアタシから視線を逸らした。
(コレはコレで傷付くな……)
「あはは、いいんで。別に。
自分の顔くらい毎日鏡で見てるし、自分がブサイクだってことよく分かってるし…」
「笠松先輩!ハッキリ言わないからひかりっちが自虐的になっちゃったじゃないっスか!」
(ハッキリ言われたら死ぬわ…)
「はぁっ!?…………白金」
「イイんですよハッキリ言わないでください泣きそうです」
「え、いや、あの……か」
「……か?」
「か……か、わいい、と、思う……っ」
「……え?」
「聞こえただろっ!二回も言わせんなっ」
笠松さんは顔をリンゴのように真っ赤にして言った。
「あ、はい。」
相手が照れているからか、何故かそんなに恥ずかしく無くて、
(あ、はいってなんだ自分……)
何だかちょっとだけ嬉しかった。