第4章 .下剋上
「火神っちの得点で誠凛もエンジンかかったと思ったっスけど、あと1歩うまくいかないっスねぇ」
「ディフェンスだけじゃ、王者は名乗れねぇよ。
オフェンスだって並じゃねぇ」
「ふ〜ん
ひかりっちはどう思うっスか?」
「どうって…アタシは選手じゃないし、中で見てみないと分かんないけど……」
「確かに正邦に、お前や火神みたいな天才スコアラーは居ねぇけどな、タイプが違うんだよ。オフェンスも、古武術を応用してる」
「そうですね。アタシが今分かってるコトといえば、正邦は天才は居ないけど達人が揃ってるチームだというコト」
「達人ならいるっスよ」
「え?」
「誠凛にも達人が居るってコトね」
笠松さんはソレが分かったようで、「ああ」と言葉を漏らした。
アタシ達の目論み通り、試合は遂に動き出した。
「なんだ今のパス!?ブーメランみたいに戻ってきた…」
「戻ってねぇよ!誰かがタップして向き変えたんだよ」
「誰かって……誰?」
「…さぁ?」
「っへへ、鉄壁の正邦ディフェンスも、カベの内側からパス喰らったことは無いみたいっスね」
横目で笠松さんの隣の黄瀬を見ると、何だか嬉しそうだ。
アタシも何だか嬉しかった……気がする
第1Q終了時、得点差は0。つまり同点だ。
「同点っスね、流石黒子っちっス」
「確かに黒子が流れを変えたコトには間違いないケド、まだ勝負は始まったばかりだし、何が起こるか…」
「またまた〜ひかりっちには視えてるんじゃないっスか?」
「視えてるって?」
「ああ、ひかりっちは試合の先の流れが視えるんスよ」
「へぇ、視えたのか?」
「恥ずかしいことに、観客席からは細かい動きが見えなくて……分かんないんですよね」
「そーなんスね」