第1章 ☆
それからまた逢えない日が続いた。
よほど忙しいのか、年末に向かうに連れて電話やメールの数も減っていた。
12月も中盤を迎え、街はクリスマス一色となっていた。
通りを歩けば暖かそうなカップル達とすれ違う。
そんなカップル達をユメは寂しそうな目で見送っていた。
……期待したらダメ。彼は忙しい人なのだから……。
そんなふうに気持を抑える日が続いた。
――そして、クリスマスイブ。
「はぁ……」
ユメは家で一人ため息をつく。
結局トランクスからクリスマスについての連絡は無いままだった。
悪い気がしてこちらからも連絡は入れていない。
迷ったけれど、一応昨夜クッキーを焼いた。
本当はケーキにしたかったけれど、今日渡せるかどうか分からないのに生ものはマズイと思った。
チラリと時計を見るとすでにPM5時。
テレビを付けても今日はどの番組もクリスマス特集で、尚更気持ちは募るばかりだ。
(期待してはいけない)
そう言い聞かせても、どうしてもどこかで期待している自分がいて……。
「……やっぱり、逢いたいよぉ……」
声に出してしまったら、居ても立ってもいられなくなった。
ユメはクッキーを持って外に出た。
空は今のユメの気持を表しているかのようにどんよりと雲っていた。
流石に寒く、吐きだす息は白かったが家でじっとしているよりはマシだった。
カプセルコーポに行くことも少し考えたが、すぐに消去した。迷惑はかけたくない。
いつ連絡が来てもいいように携帯は持っている。
ユメは最寄の駅前を適当にブラブラすることにした。
それから暖かいデパートをうろついたり本屋で立ち読みしたり、いろいろ時間を潰していたが、ついに連絡のないままどこも閉店の時間になってしまった。
締め出されるようにまた寒い夜道に出る。
思わず漏れたため息が空中に白く広がっていく。
……期待したらするだけ、辛くなるのは分かっていたのに。
だから期待しないようにしていたのに……。