第1章 ☆
道端で一人涙を溜めるユメを、何組ものカップルたちがチラチラ見ながら通り過ぎていく。
きっとクリスマスに彼氏に振られた可哀想なコとでも思われているんだろう。
『私にも素敵な彼氏がいるんだ』と言う自信も、今は無くて……。
「バカだなぁ、私……勝手にひとりで期待して」
零れ落ちそうになった涙を拭おうとした、その時だった。
「ユメ!」
背後からかかった声に、ユメは目を見開いて振り返る。
そこには今一番逢いたい人が居た。
「ごめん! 今やっと仕事が片付いて、家に迎えに行こうと思ったら、こっちにユメの気があったから……って、ユメ泣いてるの!?」
荒い息で、トランクスが途切れ途切れに喋る。
良く見ると彼の綺麗な髪が少し乱れていた。
ユメはまだ信じられなくて何も言えない。
頬に手が当てられて、ようやく現実なのだと理解する。
「遅くなっちゃってごめん。待っててくれたんだよね」
その言葉と、頬から伝わってくる彼の体温に胸がいっぱいになってしまった。
涙が溢れてきて、それを隠すように彼に抱きついた。
「ううん……ありがとう、来てくれて……ありがとうっ!」
「?」
トランクスの戸惑う声。
でもすぐに強く抱きしめてくれた。
「メリークリスマス。ユメ」
ユメは温かい腕の中でさっきとは全然違うあったかい涙を流した。