第3章 ep Toru Oikawa
ぽつぽつと話す蛍ちゃんの話を聞き、焼き鳥を食べていれば、いつのまにか時間は終電間際。
さて、終電もそろそろなくなる時間だし蛍ちゃん帰さなきゃな。
「蛍ちゃん、そろそろ終電…」
なくなるよ?と声をかけようとした。
けれど、それに被るように答えた蛍ちゃんの言葉に俺は心底驚いた。
「え?泊めてくれないんですか?」
いや!帰れよ!
「俺、オトコと2人でベッドに寝る気ないし。」
「えー。僕、上手いデスよ?1回どうです?」
ぺろりと唇を舐めながらにやり、笑う蛍ちゃん。
普通の…今まで蛍ちゃんが引っかけてきたやつらならきっと引っかかる。
でも、これは冗談だ。
ぽんと頭を撫でると俺はじっと目を見て話す。
「自分を安売りしない。
まだ終電間に合うんだから帰って家で寝なよ。」
ふいと目線を外すと俺は、蛍ちゃんの頭に置いた手でセットを乱すようにわしゃわしゃと頭を撫でる。
「でもさ、1人が寂しいんだったら一緒にいてあげる。」
俺がどんな表情をしていたのかはわからない。
でも、蛍ちゃんは1度目を見開いたかと思ったら、ふ、と、視線を下げ、力なく笑った。
「じゃあ、お邪魔します。」