第11章 もう1度振り向いて
俊side
和也さん凄い。
すっごい速い!
あんなに広がってた1位との間がどんどん縮まっていく。
残りあと1周。
先頭を走ってる選手はだいぶ疲れててスピードが落ちてる。
それに比べて和也さんは全くスピードを落とさず、残り1mまで近づいた。
ほんとに速い。
かっこいい。
「和也さん!あと少し!!」
そして___
和也さんがわずか前に出てゴールテープを切った。
「よっしゃぁぁ!」
青いハチマキをした人達が一斉に和也さんの元に走る。
和也さんは僕の方を見てお守りを掲げた。
嬉しい。
役に立てて良かった。
和也さんの笑顔にドキドキする。
1位か……すごい……
和也さんは走って観客席の方に来た。
「俊くん!見て「和也!」っ何!?」
和也さんが僕に話しかけようとして兄ちゃんが割り込む。
「お前あれって本気で走った?いつもよりフォーム最悪。腕の振りも悪いし、足の上げ方雑。運動会だからって手抜かないでよ。」
「はぁ!?抜いてねぇよ!」
ダメ出し……
暫くの沈黙。
「あーもう!ごめんって!俺が悪かった!けど1位だし結果オーライだろ?な?俊くん?」
「う、うん!すっごい良かったと思うよ!兄ちゃんも言い過ぎだよ!」
「う……ごめん……空気悪くした。」
「よし!結城!戻らねぇと!」
「えー……俺ここにいるー……」
「何言ってんだよ……流石に怒られるだろ。」
和也さんが兄ちゃんの腕を引き連れていく。
兄ちゃんは引きずられてスタンドに戻っていく。
「和也先輩!その……」
女の人が和也さんに近づく。
「お、由衣!どした?」
「あのー……その……」
「あ、俺邪魔かな?」
そう言って兄ちゃんがまたこちらに近づいてくる。
「あ、結城!何やってんだよ!ほら行くぞ。」
「チッ……」
兄ちゃんが舌打ちをする。
「ごめん、由衣。後ででいいかな?コイツ連れてくから。」
「い、いえ!やっぱいいです!失礼しました!」
その人は走って戻って行った。
何だろ……
「あーぁ、由衣可愛そー。和也くん最低ー。」
「何言ってんだよ、結城。てか自分で歩け。」
「疲れたから無理。」
「ガキかよ(笑)」