第9章 「母さん」と呼ばない
千代side
その日も「千代」になって遊んでいた。
私の中には「実代」という存在を忘れていた。
むしろ姉が「実代」のようだった。
「あ、猫!あのままじゃ引かれちゃう!」
姉さんは走ってトラックにぶち当たってしまった。
猫は無事。
けど、姉さんは血だらけ……
「っ!!?千代?あんたは無事なの?!」
「え……」
あ、そうだ……今の私は千代……
「うん。大丈夫だよ。」
「よかったぁ、あんたじゃなくて……」
え?実代なら死んでもいいの?
千代は生きてていいの?
実代はいらないの?
それから私は「実代」でなく「千代」として生きることにした。