第9章 「母さん」と呼ばない
千代side
私には双子のお姉さんがいた。
なんでもできる完璧な姉。
それに比べて私は何やっても失敗。
正反対だった。
誕生日の日も私だけのプレゼントがない。
両親にも嫌われていた。
「実代?大丈夫?」
「う、うん……」
姉さんは優しく声を掛けてくれるけど正直鬱陶しかった。
私の気も知らないくせに。
けど、ある日……
「ねぇ、たぶんさ私達入れ替わっても気づかれないんじゃないかな?双子だし……試しにやってみない?」
初めは乗る気じゃなかった。
どうせバレる。
でも、やる価値はある。
私達は公園のトイレで髪型を入れ替え服も入れ替えた。
家に帰ると……
「千代!おかえりなさい!」
私に笑顔を向け出迎えてくれた。
嘘……気づかれてない……
「どうしたの?ほらおやつあるわよ。手洗ってきなさい?」
「う、うん!」
姉さんの顔を見ると笑っていた。
嬉しそうに。
「ありがと……」
「何が?(笑)」
「な、何でもない……」
姉さんはクスクスと微笑み私の顔の表情を作った。
姉さんの存在は嫌だったけどこんな優しい姉を持って良かった……
そう思えた瞬間だった。
その日から数え切れないほど私達は入れ替わった。
長い日で1日中……
姉は文句一つ言わなかった。