第9章 「母さん」と呼ばない
結城side
「俊!」
俊が2階に駆け上がってしまった。
「結城……お願い、また『母さん』って呼んで?」
「は?何言ってんの?実の息子傷つけておいて……そもそも何で俊だけ嫌うんだよ!」
「それは………」
黙り込む。
意味分かんねぇ……
「もういい……俊の手当てしねぇと……」
俺は2階に上がり部屋に入った。
「俊……手……」
ベッドに上に座っていた。
よく見ると、傷口をさらに鉛筆で傷つけている。
出血は酷くなっていて、止まる気配がない。
「何やってんだよ!」
パシッ!
俊の腕を払い除ける。
「お前、馬鹿か?!」
「……痛くない……痛くない!こんな傷!それよりも……心臓が痛い……苦しい……息が出来ないくらい……苦しい!」
「俊っ!」
「顔も見たくない!出ていってよ!」
「ごめん!俊!」
強く抱きしめるが暴れる。
「やだ!離して!苦しいから!」
「ごめん!ごめん!」
「うっ……ぐすっ……」
俺のせいで……こんな……
「兄ちゃん……苦しい……息が出来ない……どうしよ……」
俺は俊の背中を擦り続ける。
少しでも落ち着けるように……
「大丈夫だ……ゆっくり深呼吸しろ……」
落ち着いてきたか?
呼吸が整ってきた。
俊の顔を除くと……
涙を流しながら眠っていた。
何だよ……俺が傷つけてんじゃねぇか……
最低なのは俺だ……
俊の気持ちを考えず、勝手にあんな言葉……
俊の手を手当てし、再び下に降りた。
”母さん”はソファに座り頭を抱えていた。