第5章 悪いのは……
結城side
朝になって、看護婦さんが起こしに来てくれた。
ニュースでも見ようとテレビを点ける。
昨日の事件の事を言っていた。
『引かれそうになった弟をたまたま通りかかった兄が助け足に怪我を負った』
そう言われていた。
あのときは頭が真っ白になっていてとにかく俊を守るのに必死だった。
『犯人の男は危険ドラッグを吸っていた』
その言葉を聞いて怒りが込み上がってきた。
『少年を狙った理由は一緒に死のうとした。』
更に怒りが込み上がる。
『一緒に死ぬ』だと?
そう言えばあのとき『可愛いね。』とか言ってたな。
あの男……絶対ぇ許さねぇ。
「兄ちゃん!」
俊が抱きついてきた。
「大丈夫なの?!足は?!」
俊の顔を見たら怒りが一瞬収まった。
「ん?……あー痛い……どうしよ!足が引きちぎれそうだー!」
いじめたくなって少し演技をする。
「え?!うそ!どうしよ!うわー!(汗)」
「嘘嘘(笑)そんなに痛くねぇよ。少し痛いけど。」
「っ!騙したなー!意地悪!」
「ごめんって!(笑)」
「……先生に何て言われたの?」
「あー……陸上はもうできないって……」
「え……そんな……僕のせいで……」
俊は表情が暗くなる。
「お前のせいじゃねぇよ……」
「でも!っんむ!」
頬を摘む。
「口答えしないの!お前のせいじゃねぇ!いいな?」
「うん……」
「よし。」
今日は俊も学校を休ませた。
タクシー代を渡し家に帰らせる事にした。