第5章 悪いのは……
結城side
俺は学校が終わって少し時間があったため、家に一旦帰り、着替えてバイト先に向かった。
今日も俊と会えるのが遅くなるのか……
そう思いながら歩いて向かっていると、反対側を歩いて帰っている俊を見つけた。
声を掛けようと手を振ったが……
俺は俊の近くに停まっているトラックの様子がおかしい事に気がついた。
運転手の顔色が悪い。
それに俊の方をじっと見つめてハンドルを握りしめていた。
マズイ……そんな予感がして、俊の元へ走って向かった。
そのトラックは思っていた通り俊に物凄い勢いで向かっている。
間に合え!!頼む!!
俺は俊を押し倒し体で覆い守った。
足元からメキメキっと嫌な音と共に激しい痛みが走る。
「あ゛あ゛ぁ!!」
「っ!!兄ちゃん!!」
「俊……怪我ねぇか!?」
「う、うん!僕は大丈夫だけど!兄ちゃん!足が……」
俺は痛みのする足首を見た。
あ……ヤバイ……動けねぇ……
大量の血が出ていた。
「兄ちゃん……どうしよ(泣)」
「泣くな……兄ちゃんのスボンのポケットにスマホ入ってるから、救急車呼んでくれ。」
「うん……(泣)」
俊は手が震えていた。
すると、トラックから運転手が出てきた。
手にはナイフを持っている。
「ヒヒ……」
不気味な笑みを浮かべ俊に近づいていく。
「俊!こっちに来い!」
「う、うん!」
俊の体をこっちに寄せ、必死で守る。
「凄い血……痛い?(笑)」
狂ってる。
俺に近づき足首を持った。
「兄ちゃんっ!」
そしてナイフで俺のアキレス腱を切った。
「あ゛ぁぁぁ!くっ!!」
「ヒヒッ痛い?ねぇ痛い?(笑)」
あまりの痛さに声も出なくなっていた。
男は俺を無視して俊に近づいていく。
俊は怖がって腰を抜かしていた。
「君可愛いねー、一緒に来てよー」
「や、やだ!(泣)」
男が俊の腕を掴もうとした瞬間……
「やめろ!」
2人の警官が来て男を止めた。
向こうの方では男の子が息を切らしていた。
あの子が呼んでくれたのか。
俊の友達だろう。
俺はあまりの痛さに意識が朦朧としていた。
「兄ちゃん!救急車来たよ!」
「あ、あぁ……」
既に気を失ってしまっていた。