第14章 僕のお兄ちゃん
結城side
俊の声が聞こえる……
叫び声……
起きねぇと……助けねぇと……
頭では分かっている……けど体が動かねぇ……
頭を強く打たれたせいか、思い通りにならない。
力を振り絞り起き上がろうと手を床に付き体を支える。
「あっ……く……」
起き上がった……けど立てねぇ……フラフラと体が揺れる。
歩き出す足も前に出ねぇ。
視界が歪む中、床に落ちているバットを持ち壁を伝いながら声のする方に向かっていく。
あと少し……
男の背中が見え、後ろに立つ。
よく前が見えないまま、バットを男の頭に振り落とした。
ガンッ!
直撃。
男はそのまま倒れる。
俊は浴槽の中に頭が入ったままだ。
「俊……待ってろ……ぅ……」
引き上げるが、意識はない。
呼吸もしていない……
心臓も……
やだ……やめろ……ここで死なせるかよ……
俺は人工呼吸をした。
口を合わせ空気を送り込む。
胸に手を当て、上下に動かす。
戻らない……
何度も何度も繰り返す。
「頼む……頼む!」
「ゲホっ!ゴホゴホ!!はぁはぁ……」
息をした。
「よかった……うぐっ……」
俺は頭に酷い痛みが走るのを我慢し俊を抱き抱え壁に持たれる。
「兄ちゃん……血が……」
「大……丈夫……」
俊の体は死体のように冷たく、震えていた。
目もしっかり開いていない。
「うっ……寒い……」
「待ってろ、俺の上着貸してやるから。」
上着を脱ぎ俊に着せる。
それでも寒いのか、震えが治まることはない。