第13章 あと一度だけでいいから……
俊side
明くんは何度も逃げようとしたことあるから出入口も鍵の場所もわかると言った。
本当明くんの行動には驚かされた。
僕には絶対出来ない。
「僕が引きつけるからドアの影に隠れてて。合図出すからその隙に。たぶん、あんまり時間稼げないから……」
「うん……外に出たら助けを呼ぶから。待ってて……」
「うん。気をつけてね。」
明くんはズボンのポケットに僕のミサンガと名札を入れた。
「名札?」
「うん、ランドセル勝手に焦っちゃった……ごめん。僕に何かあった時でも、これあった方が君の家族にも分かるかなって。」
「そっか……」
そこまで考えちゃうんだ……
その時、扉の鍵が開く音がした。
来た。
ギィィィィ……
男の人だ。
「あ、あの!ここ……どこですか?」
「俊くん。目が覚めたんだね。」
僕の名前なんで知ってんの……
僕は明くんに合図を出す。
「心配しなくても大丈夫だよ?今日からここが僕らの家だよ。」
「僕ら?」
「うん。」
「……やだ……帰りたい……」
「帰りたい?」
男の人の顔が怖くなる。
不味い……
近づいてきて頭を掴まれる。
「いっ!離して!!」
「俊くん、僕の言うこと聞かないと……あんなふうに……」
どこかを指さすけど、そこには何も無い……
「おい、あのガキはどこに行った?」
「だ、誰ですか?」
うまく喋れない。
「嘘つかないで?君嘘つくの苦手でしょ。」
その人は僕を離し部屋から出た。
その瞬間、すぐに玄関の閉まる音がした。
よかった。
出られたんだ。
男の人は戻ってきた。
「まぁいいや。どうせもう要らないし。それに……」
僕に近づき屈む。
「帰れないからね。」
え?帰れない?