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僕だけが知っているお兄ちゃん 【R18】

第12章 黒い影


結城side

俊が俺の後ろを歩く。
昨日のこともあり、俺は俊と横に並んで帰ることにした。

人通りの少ない道に入る。
空は橙色に光り、俺たちの影は長く動いている。

急に俊が俺の服の裾を握ってきた。

「兄ちゃん……後ろ……」

小声で俺にそう話しかける。
俺は俊が言うように後ろを振り向いてみた。
そこには全身黒ずくめの男が曲がり角の所に立っていた。

「俊……手、握ってろ。」

俊は俺の手をしっかりと握りしめ、体を震わせていた。

「おい、誰だ!」

男は何も言わない。

「おい!聞いてんのかよ!」

すると、男は出てきて俺たちに歩み寄る。

「俊、足動くか?」

「わかん……ない……」

動きそうにない。
俺は俊を抱え家に向かって走り出した。
俊を守るのに精一杯で足の痛みなど全く感じない。

「兄ちゃん……怖い……」

「大丈夫だ、もうすぐ着く。」

家の前に着くと、俊を家の中に入れ、俺は玄関の前でバットを持って男が来るのを待った。
ゆっくりと息を整え、構える。

5分程経ち、俊が中から出てきた。

「兄ちゃん……もう大丈夫じゃないかな?たぶん、来ないよ。」

全身の力が抜ける。

「良かったぁ!」

俺は俊を抱きしめ、無事を確認する。

「……ありがと……けど、足大丈夫?」

「あ……いっててて……」

俊の言葉で思い出した。

「中に入ろ?」

「そうだな。」

俺はさっきの男の右腕に火傷の跡があったのを見逃さなかった。
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