第11章 逃がさねぇよい
矢継ぎ早の質問についていけない沙羅。
何より、今、大きな誤解をされているし、とんでもない質問をされた気がする。
頭の中を整理して、質問を思い返す。
『つ~か、沙羅、マルコとどこまでやったわけ?』
『え?お二人ってそういう関係なんすか?』
「・・・・・・?!」
瞬間、体中が“カァッ”となった。自分でも顔が赤くなったのがわかる。
焦った沙羅は、珍しく大きな声で言った。
「ご、誤解です!マルコは大切な家族で!そんな・・・そんな・・・」
“そんな関係じゃありません”
と言いたかったのだが、あまりの羞恥に頬を真っ赤にし、言葉に詰まってしまう。
二十歳になったとはいえ、そのほとんどの年月を両親と白ひげ海賊団、そして一人で生きてきた沙羅にとってはそのやり取りは刺激が強すぎた。
が、男所帯の海賊にはその反応は恰好の餌食でしかない。
「まじかよ、おらぁ、てっきり・・・」
「てっきり、何だよい?」
クルーの背後から気配なくかけられた声。
その姿にほっとする沙羅と苦笑いのクルー。
「マルコ!」
「げ、マルコ隊長」
「あぁ?俺が来ちゃ都合悪いのか?」
その言葉に『滅相もございません』とばかりに首をぶんぶんと横に振るクルー達。
「ったく・・・」
言いながら、沙羅の手を取ると抱き寄せた。
「余計な事“教えん”じゃねぇ!」
そのまま沙羅を連れて、元いた場所に戻っていくマルコ。
クルー達は顔を見合わせてまた苦笑い。
“自分が教えたいわけね”
冷静沈着で、何事にも執着を示さなかったマルコの強い独占欲に戸惑いと嬉しさを感じる一番隊隊員達であった。
隊長達の中に混じった沙羅は未だ挨拶をしていなかった人物を見つけて頭を下げた。
「あの、沙羅と申します、昨日は失礼致しました」
「・・・別に」
それだけ言うと去っていってしまう。
『おい、ハルタ!』とサッチが呼び止めるも振り向きもしない。
嫌われたようだ、そう感じ取った沙羅は小さな溜息をついた。
誰とでも仲良くできるなんて思ってはいない。
ただ、挨拶くらいは、と思う自分が傲慢なのかもしれない。
そんな沙羅の耳元に“くつくつ”と特徴的な笑い声が聞こえた。
その方向に視線を向ければ、一見、女と見紛う艶めきを纏った男が立っていた。