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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第27章 幸せにおなり★


暫し後、落ち着き始めた沙羅とマルコの前に、
主はお茶を差し出した。
「懐かしいよい」
その独特の香ばしい香りにマルコが声をあげれば、沙羅も泣き笑いながら頷いた。
「歳じぃが好きだったね」
「あぁ・・・」
脳裏に浮かんだ歳三の穏やかな笑顔に、マルコもまた笑った。
それを聞いた主は、奥に控えていた者を振り返った。
ほどなくして、届けられる茶筒。
「玄米茶でございます、どうぞご賞味ください」
「いいんですか?」
驚く沙羅に主は、柔和な笑顔を浮かべた。
「お琴様と歳三様には、“永く”ご愛顧を賜りました」
主の言葉には、マルコや沙羅が立ち入れぬ深いものを感じさせた。
次の瞬間。
「・・・ありがとよい」
あくまでも付添人の体(テイ)でいたマルコは、
歳三の一番弟子であり、
白ひげ海賊団一番隊隊長不死鳥マルコであり、
沙羅の隣に立つ者であった。
「では、お包みいたします」
主の目が、微かに、ほんの微かに揺れた。
だが、それを感じさせることはなく、主は着物を丁寧に包んでいった。


店の外まで、見送りに出た年老いた主に、最後のお礼を告げて歩き出す。
その背中にかけられる言葉。
「ありがとうございました、どうぞ“お幸せに”」
「!」
マルコは少しだけ目を見開き、
沙羅は振り返り会釈をした。
二人は知らない。
お琴が主にそう言うように頼んだことを。


『取りに来るのは、
あの“二人”だからねぇ。
送り出すときは言うてくれやんせ。
言葉には魂が宿りますから、
頼みますよ。“幸せにって”』


振り返った沙羅が、一歩程先にいるマルコのもとへと戻れば、
ふわりと
優しい風がすり抜けた。
瞬間、
二人は懐かしい気配を感じた。
「「・・・」」
驚いて再度振り返ってみても、そこには年老いた主が深々とお辞儀をする姿と人々の往来があるのみ。
それでも、確かに感じた気配に、二人は答えるように指を絡めて暫し見つめあうと、どちらからともなく歩き出した。

『幸せにおなり、沙羅』
『幸せになれ、マルコ』

その後ろ姿を見送る二人の姿を、通りすがりの三毛猫だけが見つめていた。
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