第11章 逃がさねぇよい
次の日の朝、宿に荷物を取りにいく沙羅を見送ったマルコはその足で白ひげの部屋に向かった。
マルコは待たせた事を詫びながら、自分以外はすでにそろい踏みであることを、確認し席についた。
「知ってる奴も知らねえ奴もいるだろうが・・・沙羅を娘にした」
マルコが席につくと白ひげは、そう口を開き始めた。
沙羅を知る誰もが、喜びの雄叫びをあげようとした。
しかし、白ひげのどこか厳しい表情に何か感じたマルコ達は居住まいを正した。
そこから語られたのは、海賊であるマルコ達であっても顔を顰めずにはいられない沙羅の過去。
そして沙羅の力、海神伝説にまつわる話だった。
全てを話し終えた白ひげは、ゆっくりと一人一人を見据えながら言った。
「俺ぁ、あいつを必ず守ると約束している」
ロイと交わした約束。
「もし、俺の決定に不満がある奴は、今、名乗りでろぉ!!」
「「「・・・」」」
一部の隊長達が、息を飲んだ。
頭の片隅では反対すべきだと、理解していた。
それなのに、この先起こり得る戦いに胸が躍らずにはいられない。
それを代弁するようにイゾウが言った。
「海軍が恐くて海賊なんざぁやってられっかぁ、なぁ、マルコ?」
自分はとやかく言う立場にはいないと、押し黙っていたマルコを引っ張り出す。
“試されている”
一番隊隊長としての判断をイゾウが、隊長達が待っていた。
マルコはニヤリと笑った。
「当たり前ぇだよい、沙羅は“俺”の妹だ、海軍だろうが、海賊だろうが、手ぇ出す奴は許さねぇよい!」
「決まりだな」
ビスタが言った。
「沙羅ちゃんが、実の妹かぁ~」
どこか邪な感情を含むサッチを、ジョズが軽くど突く。
そんなサッチを黙殺し、マルコが言った。
「オヤジ、俺達の考えは決まりだよい!」
「「「沙羅は“俺達”の妹だ!!」」」
隊長達が一斉叫んだ。
『楽しみだなぁ』
来るべき戦闘に興奮する者。
『妹かぁ・・・』
初めての妹に期待する者。
マルコ、サッチ、ジョズ、ビスタは覚悟も新たに拳を突き合わせる。
その中で一人、冷めた瞳のハルタが異彩を放っていた。