第11章 逃がさねぇよい
暫くすると、泣き疲れたのであろう。
その場で崩れ落ちるように眠ってしまった沙羅を白ひげは、指1本で支えながら言った。
「マルコぉ、いつまでうろうろしてんだぁ」
その言葉にばつが悪そうな顔で入ってくるマルコ。
白ひげの元を訪ねてからいつまでたっても帰ってこない沙羅に痺れを切らしたマルコは、白ひげの部屋に向かった。
だが、いざ着いてみれば、入るタイミングも、入っていいかさえも計りかねて右往左往するばかり。
そんな様子さえも白ひげはお見通しだったようだ。
マルコは眠っている沙羅を起こさないように、大事に大事に抱き抱えた。
「部屋あんのかぁ?」
「とりあえず俺の部屋に寝かすよい」
「あぁ?!」
白ひげの顔が鬼に変わる。
「ご、誤解だよい、俺はサッチんとこに行くよい」
「当たり前ぇだぁ」
「よ、よい」
マルコは、ほっと息をはきながら部屋を後にしようとした。
そんなマルコの背中にかけられた声。
「明日、沙羅が荷物を取って来次第、出向だ」
「了解、ジョズに出向準備の指揮を頼むよい」
当然、一人では行かせないつもりのマルコが言えば白ひげは、首を横に振った。
「その間に隊長を全員集めろ、話がある」
「?!・・・了解!」
沙羅を一人にして、またいなくなってしまわないか不安ではあったが、白ひげの指示に逆らうことはできない。
そんな不満げな後ろ姿を白ひげは、面白そうに見送った。
もっと貪欲になりやがれ
本当に沙羅が“欲しい”のなら、
俺の“目を見て”そう言ってみろ
その覚悟が無ぇうちは、
沙羅に手ぇ出すことは許さねぇ
女一人を、沙羅を幸せにするってのは
半端な覚悟じゃできねぇんだ
なぁ、歳ぃ?
白ひげは、今は亡き、兄であり、親友であり、家族だった男を想った。
自室に戻ったマルコは、ドアを蹴り開け、その足でベッドに向かった。
そっ・・・と慎重に、大切に沙羅をベッドに降ろす。
布団かけかけ、思い出したように履いたままのサンダルを脱がす。
「・・・」
その細い足首は、マルコが力を入れれば、容易く折れてしまいそうだ。
ふっくらとしたふくらはぎは魅惑的な曲線美を描く。
先程触れた、微かに覗く太腿は柔らかかった。