第11章 逃がさねぇよい
しかし、マルコはそれよりも速く沙羅を強く抱きしめた。
「離さねぇ、・・・絶対に離さねぇよい」
耳元で、囁くように告げられた言葉に沙羅の動きが止まる。
目の前には“オヤジの誇り”
感じるのは逞しい胸元。
“!!”
沙羅の体が微かに震えた。
「沙羅、どこにも行くんじゃねぇ」
「・・・」
「一人で苦しむんじゃねぇ、俺達は家族だ」
それはかつて沙羅がマルコに送った言葉。
「っ・・・でも・・・っも・・・」
それでも必死に体を離そうとする沙羅に、マルコは言った。
「沙羅、言ったろ?おめぇは一人じゃねぇ」
「っ!!・・・」
瞬間、沙羅の瞳から涙がこぼれた。
「・・・ッ・・・ルコ・・・マルコ・・・!」
二度とその名を呼ばないと誓っていた。
でも、本当は
ずっと、ずっと、その名前を呼びたかった。
二度と会わない、会えないと思っていた。
でも、マルコを想わない日はなかった。
ずっと、
ずっと、
マルコに会いたかった。
「沙羅・・・、沙羅・・・」
マルコもまた、応えるように何度も名前を呼んだ。
二度と離さないと言わんばかりに、強く抱きしめた。
応えるように、マルコの力強い腕の中に包まれた沙羅は微かに動く手で、マルコの腰に巻かれた腰紐を“きゅっ”と握り締めた。
それから暫し沙羅を抱きしめたままのマルコ。
「で?俺達はどうすればいいわけ?」
「そう言うな、久しぶりの再会ではないか」
苛立った様子のハルタをビスタが宥める。
「いっそ、やっちまうまで待つか?」
「お前が言うと冗談に聞こえねぇんだよ!」
イゾウのニヤリとした顔を、サッチが睨みつけ、ジョズが笑い流す。
と、こちらの気配に気づいた沙羅が顔を上げた。
「サッチ!」
叫ぶやいなや、マルコの抱擁から抜け出るように出てくると、走り出す。
その勢いのまま、飛びつけば容易く受け止めるサッチ。
「っと、変わんないなぁ沙羅ちゃん」
軽く抱きしめてそう言えば、後からやってきたマルコと視線があった。
その目には僅かに嫉妬の炎が覗くが、沙羅を大事に思い、心配をしていたのはサッチも同じ。
加えて、再会を喜ぶ沙羅の邪魔するのは避けたかった。