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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第11章 逃がさねぇよい


 無論、この作戦を実行するにあたり『傷一つつけるんじゃね~ぞぉ』と白ひげから言われている。
動揺したイゾウに僅かな隙が生まれた。
瞬間、イゾウに降り注いだ大量の水。
「・・・」
逃げていく沙羅を見送りながら気怠げに溜息をつき、結い上げた髪を撫でる姿は、どこまでも艶(ナマ)めかしかった。



 危機を脱した沙羅は、林を抜けた。もう砂浜、あと少しで海だ。
一瞬、気が緩んだ。
「逃がさねぇよい」
気がついた時には、自分の右手首を掴む力強い手。
反射的に左手を手刀に変えるも、その手も押さえられ、あげく、足も払われてしまう。
「あっ・・・」
小さく上がる声と共に砂浜に落ちていく体。多少の衝撃は覚悟したが、それが、訪れることはなかった。

“・・・?”

靴を通して微かに感じる砂浜。
背中と太腿に感じる暖かくて力強い手。

“!!”

無意識に閉じていた瞳を開くと、金色の特徴的な髪型が揺れている。
恐る恐る目線を下げれば、いつも優しい眼差しだった青い瞳が、少しだけ鋭く沙羅を捉えていた。
「沙羅・・・」
記憶よりも、少しだけ低くなったマルコの声が沙羅を呼んだ。
離れてから何度も何度も、聞きたいと思った声に胸が震える。
このまま自分を呼ぶ声に応えられたら、どんなに嬉しいか。
だが、そんなことをすれば今度はマルコ達に危険が及ぶ。
もう二度と、大切な家族が死ぬ所など見たくなかった。
もう二度と、自分の為に家族が死んで欲しくなかった。
二度と・・・動かなくなった家族を、物言わぬ家族を抱きしめて泣きたくなかった。

どんなに寂しくても、
どんなに辛くても、
どんなに会いたくても、
大切な家族を、マルコを、失うくらいなら、
一人で生きていく。

絶望に打ち拉がれた“あの日”そう誓った。

「離して!」
沙羅は滲みそうになる涙を堪え、毅然と言い放った。
そのまま僅かに砂浜についていた足に力をいれ、体を起こそうとした。
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