第11章 逃がさねぇよい
沙羅を捕まえる、そう決めたマルコの作戦は、見事に当たっていた。
すぐに海に逃げようとするだろうからと、海側にジョズを配置した。
ジョズを越えていくには、“力”を使わなくてはならない。が、それは悪魔の実の能力者であるジョズには、ダメージとなる。意識的に家族を傷つける事は何があっても、絶対にできないだろう。
だから、海に逃げるのは諦めざるを得ない。
と、なれば残すは三方(サンポウ)だが、親しい家族より見知らぬ家族、必然的に残るのは、前方ハルタだけ。
それからの道は市街地へ向かう1本のみ。
一般人を巻き込むことはしないだろう。
必然的に、小さな林を抜けて海へすぐに向かうはず。
そこにさらに“お琴”を彷彿とさせるイゾウが現れれば、動揺するはずだと。
イゾウは“お琴”と言う人物が何者か気にはなったが、捨て置き、もう一つの気がかりを口にした。
『女一人に隊長“6”人たぁ、随分仰々しいじゃねぇか』
するとマルコはニヤリと笑って言った。
『言っとくが、本気出されたらただじゃすまねぇよい』
特に上下関係はないとはいえ、実質白ひげ海賊団No2のマルコの実力は誰もが認める所。
そのマルコに、そこまで言わせる女がいるとは驚きだった。
その女が、“今”目の前にいる。
イゾウの目に危険な光が宿る。
先日自分を乱した女と同一人物だと物語る姿、形、そして何よりも、その瞳の色。
一見、男の後ろで大人しく愛でてられるのがお似合いな、美しく儚げな女。
いったいどんな戦い方をするのか、
どのくらい強いのか。
想像するだけで体が高揚した。
もともと、気は短くないが好戦的な質(タチ)だ。
「・・・」
イゾウは拳銃を懐に戻した。
接近戦ならば、剣でやり合うのも悪くない。
「「・・・」」
沙羅とイゾウの視線が絡んだ。
“キィィィンッ・・・”
駆けつけたサッチ達は、思わず見惚れた。
まるで、一対の絵のようだった。
“武(ブ)を極めれば舞(ブ)に極まる”
かつてお琴から言われた言葉をサッチは思い出さずにはいられなかった。
二人の力は一見互角のようにも見えた。
しかし、いかに、沙羅が強いとはいえ、白ひげ海賊団の隊長を張るイゾウが肉弾戦で負けるはずもない。
だが、沙羅は捕まるわけにはいかなかった。
イゾウの攻撃にバランスを崩した沙羅。