第2章 出会い
だが、沙羅はそんなマルコの戸惑いを軽く超えていく。
「今日はいい波だよ!」
マルコの腕を取ると、そのまま波打ち際まで走り出す。
「お、おい!」
「もしかして、濡れるの嫌い?」
「そうじゃねーよい、お前・・・」
「?」
言い淀んだマルコを瑠璃色の瞳が見上げた。
「嫌じゃねーのかよい・・・俺は・・・海賊だい」
最後が小さくなったのは無意識だった。
海賊である自分を、オヤジを恥ずかしいと思ったことはない。
海賊であることに誇りもある。
でも、何故か沙羅にだけは、海賊を理由に嫌われたくなかった。
しかし、そんなマルコの心中(シンチュウ)を他所に、沙羅はあっさりと言った。
「海賊だと何か特別なの?」
「?」
「私、マルコが好き!それじゃいけないの?」
それだけ言うと、マルコを置き去りにし、波打ち際まで走って行く。
「・・・」
予想だにしていなかった返答に、暫し呆気にとられた。直後、こみ上げてくる笑いを堪えることなくマルコは声を出して笑い出した。
「っく・・・ククク!アハハハハ!」
自分の気にしていた事が、沙羅にとっては疑問に思うことですらないことが可笑しい。
親からの愛を知らず、親戚にも嫌われ、町の厄介者として扱われ、好かれるどころか、存在を認められることすらなかった。
いつしか、嫌われ者であることに慣れてしまったマルコ。
オヤジと兄弟がいればそれでいい、そう思っていた。
だが、沙羅はそんなマルコを好きと言ってくれた。
「まいったねぃ」
曇りのないまっすぐな気持ちがこそばゆくて
柄にもなくその姿が可愛いと思ってしまったマルコ。
その思いの元をマルコはまだ気づかない。