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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第8章 悪夢など生温い一夜


 どのくらいの時がたっただろうか。
気がつくと、男達の声が聞こえた。
『どうすんだよ!』
『死んでる・・・』
『っくそ!』
沙羅の体が震えた。この壁がユエの命と引き換えの物だとやっと気がついた。
枯れたはずの涙がまた溢れ出す。
父を殺され
母を犯され
あげくに、自分を守ってくれた母の命すら失うのかと。
だが、沙羅の悪夢のような一夜はそれでは終わらなかった。






 朝日が昇り、しばらくすると沙羅の体内に力が戻った。
「・・・」
ユエの命の壁から抜け出た沙羅は、感情が果てたような目にその光景を映した。
目の前には、血だらけで横たわるロイと、ユエ“だった”もの。
美しい銀髪は、乱暴に切られていた。
そして、鮮やか青い瞳の変わりに空虚な穴と、赤い涙。
両手首から下がない。
左膝から下がない。
左胸にはぽっかりとした穴・・・。

蘇るおぞましい会話。
誰かに指示されてきたのだろう。
目的のユエに死なれた男達は逃げることを決断した。
そして、逃げるのなら力が必要だと口々に言い始めた。
最早、狂気だった。
ユエの体を部品のように取りあった。
『この目だ!これ』
『それは俺のだ!』
『俺はこの足が堪んねぇ』

「・・・っ」
思わずこみ上げる吐き気。
体が震えた。
涙など何の役に立つのだろうか。


許さない。

父を殺し、

母を陵辱した者を。

あまつさえ、その死を辱めた者を。

決して許さない。

必ず、殺し行く。

そして、母の体の全てが海に還り、

父と再び出会うまで、

この身が朽ち果てようとも探し続ける。


瑠璃色の瞳に憎悪の炎が宿った。
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