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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第8章 悪夢など生温い一夜


 マルコは空を飛翔していた。
昨日の新月の晩、何か胸騒ぎを覚えたマルコは見張り役ではなかったが、甲板で待機していた。
敵の気配はしなかった。だが、どうにも嫌な予感がして落ち着かない。
とはいえ、静かな海と春の気候に誘われてうとうとし始めた時だった。
「マルコォ~」
白ひげの大声に、マルコは大慌てで船長室に向かった。
そこには、顔をしかめた白ひげが真っ二つに割れたモビーディック号の模型を持って立っていた。
沙羅の父、ロイがお守りだと言って白ひげに送った特別な“それ”。

“!!”

マルコは、蒼い炎を纏った。
「行け!マルコォ」
白ひげの許可が降りると同時に空に飛び出した。
それから、ひたすら休みなく飛び続けやっと沙羅の暮らす半島が点のように見えてきた時だった。
遥か前方に巨大な壁が見えた。

“?!”

海が高く高く上がっていた。
このままでは沙羅の暮らす半島は飲み込まれてしまう。
速度を上げるマルコ。
近づく大波。
巨大な波が半島を飲み込むのと、マルコがその上空にたどり着いたのはほぼ同時だった。

“沙羅!!”

咄嗟にその姿を探した。
その時、マルコは見た。
半島を覆い、飲み込んでいく巨大な波の中に人影が、消えていくのを。

“沙羅?!”

「沙羅~~~~~~~!!」

声の限り叫んだマルコ。
人影が、微かに揺れた気がした。
だが、その人影は振り返ることなく波の中に消えた。


後に残ったのは、茶色い大地だけだった。
沙羅も、ロイも、ユエもいない。
家も、
宴をした庭も、
マルコが沙羅と出会った森でさえも、
残っていなかった。




それから、白ひげ海賊団総出で沙羅達の行方を捜すも、その行方は一向に知れず。
そして、何年もの月日が流れた。
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