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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第7章 それからの一年


 お琴は徐に立ち上がると優しい微笑みを浮かべた。
「これはね、お前さんが大人になって、身も心も預けられる相手にあったら、着て欲しいんだよ」
言いながらも帯を選んでいくお琴はさらに言い繋いだ。
「沙羅、世界はとてつもなく広いんだよ、その広い世界には必ずお前さんの全てを受け止めて、支えてくれる“男”がいる」
「おじ様や、歳じぃみたいに?」
「・・・まぁ、今のお前さんには難しい話だろうが、よくお聞き」
一瞬、柳眉を顰めつつもお琴は続けた。
「ニューゲートや歳さんとは違う存在さね」
その言葉に沙羅はマルコとサッチを見た。
それに気がついたお琴は急に“にこり”と沙羅に笑い、次いで、マルコとサッチに獲物を狙うかのように笑いかけた。
「沙羅、世界は広いんだよ、身近な所で手を打たなくてもいいさね、・・・いい男は世界に巨万(ゴマン)といるさ」
あまりの言われように、マルコは顔を微かに顰め、サッチは、がっくりとうなだれた。
しかし、お琴はさらに言った。
「おや、サッチ、具合悪そうだねぇ、何なら先にお帰りよ、後は香屋だけだからねぇ」
遠回しに邪魔だと言われ、蛇に睨まれた蛙のごとくサッチは、頷き返した。
それでも、万が一を考えてマルコの荷物を全て持っていくのは、さすがに副長だ。
その背中に、とどめの一言。
「あ、万が一の時は荷物だけは守っておくれねぇ」
「・・・」
“俺の命は荷物以下ですか?”と思いつつ、最早言い返す気力もなく、サッチはモビーディックに向かった。
そんなサッチの背中を見送りながら沙羅はお琴の言葉を、反芻していた。
白ひげや歳三とは違う、全てを受け止めて支えてくれる男。そんな人がこの世界にいるのだろうか。
父・・・、とも違うだろう。
横に立ったマルコを沙羅は密かに見上げた。
初めての友達で、時々兄のような存在のマルコ。
優しくて、強くて・・・?
そこで沙羅はふと、違和感を感じた。
サッチも、ジョズも、他のクルーも皆優しく、強い。
でも、マルコは、マルコだけは何かが違った。
この胸がざわつくような、ドキリとするような高揚感。
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