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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第7章 それからの一年


 その後、お琴がマルコに物申すことはなかった。
ただ、何かを悟ったように、今まで以上に、厳しくも温かく沙羅に接するお琴を見て、白ひげだけが微かな不安を感じていた。


 月日は流れ、歳三がこの世を去ってから明日で一年が経とうとしていた。

5月10日の朝、モビーディック号にお琴の不機嫌な声が響いた。
「何だってぇ?」
「いや、だから、沙羅ちゃんと二人ってのはちょっと・・・」
「ちょっと?・・・何だい?」
柳眉を顰め、睨めばサッチも押され気味だ。
「思ったよりも治安が悪い上に、海軍までいるんだ、これは譲れねぇよい」
見かねたマルコが助け船を出せば、お琴の視線がマルコに向かう。
「つまり、副長としての判断かい?」
「あぁ、悪いが沙羅と二人での買い物は諦めてくれ」
島に着く前から沙羅と二人だけでの買い物を望んでいたお琴は小さく溜息をついた。
「仕方ないねぇ、副長の判断には従うよ」
「すまねぇ、二人ほどつけるよい」
が、そこはさすがにお琴。すぐに名案を思いついたらしく艶やかに笑った。
「何言ってんだい、荷物持ちならお前さん達で充分だ」
副長を務めるマルコとサッチを捕まえ、“荷物持ち”呼ばわりするお琴に言い返せる者などなく、二人は荷物持ちとしてついて行くことになった。


 両手に紙袋を持ったマルコとサッチは、疲労を浮かべながらも、ただ黙ってその光景を見ていた。
「その色はやめとくれ、顔色が濁る」
椅子に緩(ユル)りと腰掛けながら、沙羅の着物を選ぶお琴。
そんなお琴に沙羅は困ったような笑みを浮かべていた。
すでに目が飛び出る程のお金を費やし、沙羅の為にと、様々な物を買っているというのに、更に着物を誂(アツラ)えると言い出したお琴。
「その白地のを見せとくれ」
たくさんの着物がひしめく中、お琴が目に止めたのは白に淡藤色と鮮やかな青が映える地に、足元を中心に、小花柄が描かれた物。
小花柄の清楚さに白の清廉さ、淡藤の柔らかさと青の凛とした強さが美しい着物に沙羅も目を奪われる。
が、どう考えても戦闘向きではないし、今の自分にはまだ大人っぽすぎる。
それを伝えると、お琴は言った。
「これは、今のお前さんに上げるんじゃないよ」
「?」
意味が分からず、首を傾げる沙羅。
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