第7章 それからの一年
独特の鋭さを持つ目に見据えられれば、マルコは目を逸らすことさえできなかった。
「お前さん、それでも男かい?!」
「?!」
「あの人を、超えると二人に誓ったんじゃないのかい?!」
「!!」
「男が一度誓ったことからお逃げでないよ」
「・・・」
「あの人は、・・・歳さんは、半端な奴を弟子にしたつもりはないねぇ」
そこでお琴は、僅かに言葉を詰まらせた。
滲もうとする涙すら許さないように、目を見開く。
「歳さんを馬鹿におしでないよ!」
そう言い切ったお琴は、そのまま去って行った。
一人残されたマルコは、拳を握り体を震わせた。
自分よりも辛いはずのお琴に、気遣われ、それを言わせてしまった自分に腹が立った。
悔しくて、
恥ずかしくて、
自分の情けなさに、涙が出そうになる。
だが、泣くことは許されない。
そう思ったマルコに遠慮がちにかけられた声。
「マルコ・・・」
「沙羅・・・」
思いも寄らないタイミングで現れた沙羅に動揺し、堪えた涙が溢れそうになる。
そんなマルコを沙羅は突然抱きしめた。
「っ沙羅?!」
マルコよりも頭二つ分程小さい沙羅。
その沙羅が精一杯力を込めてマルコを抱きしめる。
「マルコ、ごめんね」
瑠璃色の瞳がマルコを見上げる。
「歳じぃを助けられなくてごめんね」
「沙羅?」
「私にもっと強い力があったら、助けられた」
「!!ち、違うよい、俺が弱かっ」
マルコの言葉を遮るように沙羅はゆっくりと首を横に降った。
「マルコ、・・・一人で、背合わないで?」
「!!」
「皆、後悔してるんだよ、だから・・・」
痛みを堪えるように、沙羅が笑った。
「一人で苦しまないで?」
「!!っ・・・」
瞬間、マルコは沙羅を強く抱きしめた。
その目には涙が浮かぶ。
「っ・・・少しだけ・・・」
声を震わせたマルコに頷きながら、その背中をトントンと軽くて撫でる沙羅。
少しだけ、少しだけ、
“抱きしめさせてくれよい・・・”
マルコは、心の中で願うように祈った。
その晩、マルコは白ひげに蒼い炎を披露した。
「グララララ~、歳が喜んでらぁ」
「・・・よい」
涙を滲ませながら答えるマルコに、
白ひげはニヤリとした笑みを浮かべた。