第6章 5月11日
自分は、この冒険の隊長を務めている。
家族の命を守る責任がある。
“沙羅・・・”
今も、ガイムを鋭い目で見据えている沙羅を視界の端にしっかりと収めた。
『手は貸さんよ、隊長として責任を果たす事を知るんじゃ』
隊長任命の際の、歳三の言葉を噛み締める。
マルコの目に燃えるような闘志が宿った。
「ジョズ、皆を頼む」
一言、言えばガイムへと一歩足を進めた。
勝てないのはわかっている。だが、皆を逃がすだけの強さはある。
勝てなくてもいい、皆を、沙羅を守れれば。
そう思ったマルコは、不敵な笑みを浮かべた。
一瞬の、間(マ)。
「マルコ、そろそろ交代するとしよう」
歳三の声が、文字通り空気を一変させた。
気がつけば、ガイムの手下は全員倒れていた。
「歳じぃ・・・」
「歳三!!」
ガイムが出現するよりも僅かに早く、ただならぬ気配を感じ、姿を潜めていた歳三。その歳三が姿を現したことに戸惑うマルコと、驚くガイム。
「歳じぃ、俺は隊長として・・・」
言葉を濁しつつ、隊長としての責任があると思っているマルコは、ガイムの正面を、譲ろうとしない。
そんなマルコに歳三は言った。
「マルコ、責任を“持つ”ことと、“果たす”ことは違う」
「?!」
「お前が今果たすべきは、クルー全員を無事にモビーまで導くことだ」
「歳じぃ・・・けど、俺は!」
歳三の言う意味は頭では理解できた。しかし、心は受け入れることができない。
歳三はとてつもなく強い。
歳三の下(モト)修行をして2年、白ひげ海賊団一番隊副長としてその名を知られるようになったマルコ。
それでもなお、歳三の強さは遥か高みにあった。
その歳三の強さをもってしても、ガイムの強さは得体の知れぬ不気味さがあった。
恐らく戦えばどちらかが命を落とすことになるであろう。
そして、誰よりもそれを感じているのは歳三であるとマルコは気づいてしまっていた。
そんなマルコを見透かして歳三は言った。
「マルコ、責任を持つには、まだ早い」
そして、音もなくマルコの前に立つと、剣を抜いた。
「・・・グククク、さすがは仙人の歳三だ・・・」
気味の悪い笑いとともに、ガイムは顔と手を蛇へと変えた。
ギィィィッッンンンン・・・
一撃の衝撃で、回りの大木が倒れた。
次々と繰り出される攻撃、
爆発音に爆風、
覇気のぶつかり合いに、
衝撃波。
