第6章 5月11日
マルコ達の反応を楽しみながら、ガイムは続ける。
「その娘、妙な力を使うんだってなぁ?」
にたりにたりと笑い、マルコとサッチを指差した。
「死ぬはずだったらしいな」
““!!””
二人はガイムが何を言わんとしているか気づいた。
恐らく生き残ったハワードの部下が沙羅の力を見たのだ。
しかし、ガイムは二人の予想を裏切る言葉を吐いた。
「なぁ、海神伝説って知ってるか?」
「「?」」
その言葉に二人は一瞬、気を取られた。
「見ぃつけたぞ~」
凄まじい瞬発力でマルコの後ろに回り込み、沙羅に顔を近づける。
「っッ!」
沙羅の声にならない悲鳴があがる。
その顔は、最早人間ではなかった。
褐色の蛇となったガイムの口から、赤い下がチロチロと蠢き沙羅を舐め上げようとする。
それをサッチが、すんでの所で剣を振るい阻止し、マルコが沙羅を抱きかかえ、飛びすさる。
「いい声だ・・・」
ねっとりとした笑みを浮かべた瞬間、ガイムの腕が蛇に変わり、サッチの首を締め上げた。
「・・・ッア′ッ・・・ガッ・・・」
「サッチぃ!やめて!!」
サッチの苦しみに満ちた顔と声、沙羅の悲鳴にガイムは高揚した。
ニタリと笑い、二人を見、次いでマルコを見た。
怒りに顔を歪ませているが、油断なく自分を見据える目。
その顔をもっと歪ませてみたい。
若い男が怒り、苦しむ姿を見るのも気持ちがいい。
「・・・アア・・・ッ・・・」
サッチの意識が落ちて行く。このまま首をへし折ってもいいが、もっと苦痛を与えてみたい。
ガイムは一旦蛇となった腕を解くと、倒れ込んだサッチの耳に囁いた。
『なぁ、あの娘は、お前達に取っても特別か?』
“!!”
サッチの顔に驚愕と怒りが浮かぶ。
それを満足そうに眺めたガイム。
“よせ!!”
だが、無情にも体は動かず、沙羅に掴みかかるガイムを見ているしかない。
沙羅の腕を掴んだガイムは言った。
「美しい目だ、このままくり抜いて愛でてようか」
「・・・ッヤ・・・」
沙羅の目に、ガイムの手が伸びる。
だが、それを許すマルコではない。
「させねぇよい!!」
マルコの拳が、ガイムと沙羅を引き離す。
ニタリ。
ガイムが笑った。
マルコの拳を掴み、そのまま引き寄せる。
マルコの耳元で、ガイムが囁いた。