• テキストサイズ

海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第6章 5月11日


 巨岩の上に立ち、さらに上の巨木を見上げる。
隣を見れば沙羅は見上げたまま目を閉じ、耳を澄ませていた。
その無防備な仕草に、そのまま唇を奪いたくなるもマルコはぐっと堪えて、静かに見守る。
徐に、瑠璃色の瞳が開かれた。
「あ、・・・いた、あそこ・・・」
指し示した先は似たり寄ったりの木々ばかり。
だが、不思議なことにマルコにはそれがどの木か、感じ取ることが出来た。
「登れるかな?」
枝葉はあるが、間隔が広く沙羅では足をかけても手が届かないだろう。
それでも目測を図り、登ろうとしている沙羅をマルコは軽く小突いた。
「少しは大人しく待ってろよい」
“このお転婆目!”
の意を込めれば、バツの悪そうな顔を返す沙羅。
その表情を確認したマルコはニッと笑い、力強く木を登っていく。
時には、隣の木の幹を足がかりに、
時には、腕の力のみで自身の体を持ち上げる。
見守る沙羅の胸がざわめく。
悔しいとも、羨ましいとも形容し難い、この感情。

“まただ”

最近、マルコにだけ時々感じるこの感覚が何なのか。沙羅が知るのはまだ先の話。


 時々、沙羅がいることを確認しながら巨木を登るマルコの頭上の枝に鳥の巣のようなものが見えてくる。

“あれか?”

マルコは、細くなってきた枝を折らないように体重を分散させながら登った。

“・・・!!”

鳥の巣には、卵も雛もいなかった。
その代わりにいた、いや、あったのは毒々しい色を放つ果物、悪魔の実だった。
マルコはごくりと生唾を飲んだ。
強くなりたいと思っているマルコにとっては咽から手が出るほど欲しいもの。
それが、今の目の前にある。
そのまま食べてしまおうかと、誘惑に駆られる。
だが、何の実かもわからず、ましてや宝の地図を見つけたのは歳三だ。
勝手に食べるのは気が引けた。
結局、マルコは悪魔の実を手に持ち、木を降りた。

 この時の判断を、マルコは死ぬほど後悔することになるとは、夢にも思わなかった。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp