第27章 幸せにおなり★
目眩のする心の中で、沙羅は必死に考えた。
あの言葉はマルコの本心だろう。
だが、どうやってそれを確認したらいいのだろうか?
『マルコはしたいの?』
いやいや、なんだか上から目線?
それに何度か直接的すぎる気がする。
何より、
仮に、したいと言われて、すぐにできるのだろうか?
今?
ここで?
・・・
・・・
・・・
無理!!
沙羅は心の中で叫んだ。
その様子をマルコはずっと眺めていた。
沙羅は気がついていないようだが、
先ほどから、こちらを見たまま顔色を赤くしたり青くしたり忙しい。
沙羅の胸の内を覗くことは叶わないけれど、自分の事で悩んでいるであろうことは想像に難くない。
「・・・」
マルコはちらりと窓に視線をやった。
このまま沙羅の心が落ち着くまで待っていてもいいのだが、きっとこの窓から見える光景は沙羅を幸せな気持ちにするに違いない。
少し逡巡の後、マルコは窓へと体を向けた。
「沙羅」
そうして、名前を呼べば我に返ったように瑠璃色の瞳がマルコをしっかりと見つめた。
「?」
声をかけてきたものの、それ以上動きのないマルコに少しだけ疑問を感じつつ。
が、しかし、沙羅は何事か聞き返すことなくベッドを降りた。
マルコの元に歩みよれば、視線は窓の外へ。
・
・
・
瑠璃色の瞳が茜を写した。
遥か彼方、地平線に燃える太陽が半分程、海に沈んでいた。
最後の力を振り絞るように、
太陽は海を空を、世界を茜色に染める。
「・・・!」
言葉を発することを忘れたまま、
マルコを見上げれば、マルコは目元を綻ばせながら窓を開けてくれた。
海が押し寄せては、岩肌にぶつかり泡となる。
高くあがる波飛沫は、時折風に乗り、
開け放たれた窓まで舞い上がる。
その飛沫さえも、茜に染まる。
「きれい・・・本当に綺麗・・・」
その美しさに、心が泣いてしまう。
その思いのままにマルコをまた見上げれば、
いつから見られていたのだろうか。
目尻を緩めたマルコと視線が重なった。
「・・・」
ふと、
何のきっかけもなく、
ただ、ふっ・・・と、
気づいた。
マルコが
今、何を思っているのか。
「・・・」
一呼吸ほどの逡巡。
その後(ノチ)、
考えるよりも早く
心が動いた。
沙羅は、
目蓋を、
ゆっくりと閉じた。