第27章 幸せにおなり★
“・・・”
瞼に感じる熱に、沙羅は意識を浮上させた。
薄っらと開いた瞼から緋色の光が見えた。
「・・・?」
次いで見えたのは見慣れない天井。
ぼんやりとした頭のまま、体を起き上がらせれば緋色の光の中から声がした。
「起きたかい?」
「・・・」
緋色の光の中から現れたマルコは、見慣れた蒼い炎ではないけれど、正しく不死鳥のように煌めいて見えた。
“きれい・・・”
まるで炎から復活したように、生命力溢れるその立ち姿に魅せられた。
「沙羅?気分でも悪いかい?」
目を開けたままぼんやりとしているように見える沙羅に、マルコはゆっくりと近づき、その額にそっと触れた。
瑠璃色の瞳が、蒼い瞳を映す。
「・・・?!!っ」
一気に覚醒する意識と記憶。
それは触れたままのマルコの手にも熱となって伝わった。
「・・・、飲めるかい?」
自分を意識した反応に、心の内は乱れたが、また気を失われるのは本意ではない。
マルコはベッドの横にある水差しを示しながら、熱を感じていた手を動かした。
「・・・」
水を注ぐ音。
それに連なるマルコの静かな動き。
見るとはなしに、眺めながら沙羅は己の心が凪いでいくのを感じていた。
「ありがとう」
差し出されたコップに、小さくお礼を告げれば、いつもと変わらないマルコの笑顔。
「・・・」
その表情を沙羅はじっと見つめた。
“抱きたい”
マルコは確かにそう告げた。
でも、沙羅から見たマルコは、いつだって余裕綽々といった様子で、翻弄されているのは自分ばかりだと思っていた。
でも・・・、
本当は違うのかもしれない。
もしかしたら、
我慢させているのかもしれない。
教えてやると言われ、
ありのままの沙羅を好ましいと言ってくれた。
その、言葉に嘘偽りはないだろう。
それでも
マルコにはマルコのペースがあって、
きっと・・・
“我慢してくれている”
それはつまり・・・
つまり・・・。
『抱きてぇ』
「!!」
頭の中で、マルコの声が爆弾を投下した。
きっと頭から湯気があがっているに違いない。
思い出すだけで上がる体温。
心臓がうるさいほどに脈打った。
男の人なのに、あの色気はいったいなんなんだろう。
声音。
表情。
言葉。
全てが沙羅の心を乱す。