第27章 幸せにおなり★
そうして、草や木々が生い茂る中に二人は降りたった。
「・・・」
「・・・」
抱き上げたままの状態で二人の視線が絡んだ。
と、二人は堪えきれずに吹き出した。
「まさかと、思ったが!」
「びっくりしたね!」
「こんな上陸は初めてだい」
「私も!どうやって上陸しようか考えてたのに!」
ゾイド達に二人の旅を気づかれないようにするには、極力人目につかないようにすること。
とりわけ、港の出入りは一番の危険地帯だった。
それが港を使わず、お互いの能力も使わずに上陸できるとは。
しかも、海王類にボールのように投げられるなんて、誰が予測できようか。
投げられた時は恐怖を感じたが、時間も人目も大きく減らすことができたとは、運がいい。
マルコは沙羅をゆっくりと降ろすと言った。
「ついてるよい、今日中に移動できる」
それに沙羅も笑顔で頷けば、マルコがにやりと笑った。
「っ!」
軽く唇を重ねて耳元で
『沙羅のおかげだい、ありがとよい』と囁いた。
翌日、二人は次の島に上陸していた。
和装屋のある島には、明日船が出る。
予想していたよりも、活気溢れる夏島にほっとしながら一晩の宿を探し歩く。
青い空に、白い窓枠、石畳の町並み。
それらを眩しそうに眺めながら歩く沙羅に、マルコが簡単な島の特長を伝え終えたところで沙羅は急に真剣な表情で訪ねた。
「マルコって・・・」
「うん?」
「何年生きてるの?」
「?!・・・」
思いもよらない発言にマルコは言葉を詰まらせた。
大人になった今でこそ、そこまで気にならないが、幼いころは年の差にかなりのコンプレックスを抱いていた。
今も、二十歳を越えて数年の沙羅と、まもなく三十になる自分との年齢差を意識しないわけではない。
年齢の話は沙羅としたことはなかったが、何か“おっさん臭い”と思わせることをしてしまったのだろう。
年の差を隠していたわけではないけれど、何とも言えぬ虚しさ、寂しさにマルコは困ったような曖昧な笑みを浮かべた。
「あ~・・・、沙羅」
「だって、私とそんなに変わらないはずなのに、何でも知ってるよね?」
意を決して口を開いたマルコの発言は、沙羅の自問自答によって書き消された。