第27章 幸せにおなり★
何でもありの新世界を小舟は順調に進む。
「マルコ、このまま東でいい?」
「あぁ、問題ねぇ」
ログポースを確認しながらマルコはゆったりと座っていた。
いつもなら一飛びではあるが、不死鳥の姿は目立つ。
かといって、マルコを伴って海中を行くのは、沙羅にそれなりの負担をかけてしまう。
幸い、モビーディック号の比較的近くに島があり、そこから島を経由して、和装屋のある島につくことができた。
「夕方前には着きそうだねい」
「うん、あ・・・」
その声に反応しようとして、が、マルコは目を見開いた。
進行方向の海が盛り上がれば、大小の波が押し寄せて小舟を大きく揺らす。
現れたのは巨大な海王類。
その巨大な海王類が、体を嬉しそうに揺らしながら言う。
「沙羅、ドコイク?」
「この先にある島に行くの」
そう言って島の名前を告げたら、海王類はまた嬉しそうに体を揺らした。
無論、小舟は転覆するか否かほどに揺れる。
「シッテル、ソコシッテル、オクッテアゲル!」
「え?!」
沙羅が戸惑うのと、マルコの背中を悪寒が走ったのは同時だった。
瞬間、
小舟は宙を浮いた。
「「!!」」
叫び声を上げなかっただけ、表彰ものだろう。
巨大な海王類が力いっぱい投げた小舟は、豪速球、いや音速のごとく飛んでいく。
空も海も線に見えるほどに、速い。
全く見えなかった島が見えてくるのはあっという間だった。
かなりの時間稼ぎができた。
それほどに速い、速すぎた。
このままでは小舟もろとも、大破する。
「・・・っ!」
マルコは舌打ちすると荷物を肩がけし、
青ざめて動けない沙羅を片手で抱き上げた。
「捕まれ!」
声をかければ、遠慮がちにマルコの首に絡められていた沙羅の腕に、きゅっと力がこもった。
その仕草にマルコは目を愛おしそうに細め、
次いで、
行く手に鋭い眼差しを向けた。
「行くよい!」
海に対して平行に進んでいる小舟を、叩き落とすように思い切り蹴り押せば、二人の体は空を舞った。
小舟は狙いどおり、海中に沈んでいく。
それを眼下におさめながら、青から緑に変化していく世界。