第27章 幸せにおなり★
今、モビーディック号は、この広い広い新世界でゾイドの根城であるサタン島へ向かっている。
が、単純な距離からしても、簡単に行けるわけではない。
さらに、その道すがら、白ひげの名の元に守られている島々の見回り。
その上、あちこちから聞こえる世界政府に加盟するほどの富もなく、
力もない人々の『助けてくれ』という悲痛な叫び。
海賊という恐れ嫌わる存在でありながら、白ひげ海賊団は単純な悪とは片付けられない存在だった。
それ故に、航路を簡単に変更することはできなかった。
無論、1,000人を超える家族が暮らしているのだ。
誰か一人に偏りすぎれば、不満もでる。
食料や物資の不足という、物理的な危険も否めない。
「マルコ、おめぇはどうしたい?」
「俺は・・・」
一瞬の沈黙。
だが、答えに迷いはなかった。
「一緒に行くよい」
「?!」
驚いたのは白ひげではなく沙羅。
白ひげの片腕的存在であるマルコを連れ出す気など、沙羅には毛頭ない。
音が出るのでは?というほどに勢いよく、マルコの方を向き、次いで白ひげを見た。
白ひげは
真っ直ぐに
マルコを見ていた。
マルコもまた、
白ひげを真っ直ぐに見ていた。
次の瞬間だった。
「おやじぃ!聞いてくれ?!」
中堅のクルーが、声をあげながら白ひげの部屋の扉を開けた。
カッ・・・と金色の瞳が見開かれ、凄まじい覇気が放たれた。
扉を開けたクルーは扉ごと吹っ飛び、モビーディック号が震えた。
船内では無防備の沙羅も受け身を取りきれず、
壁に叩きつけらる、
その、はずだった。
「・・・・・・?・・・?!」
閉じた瞳を開けば、目の前には誇りを刻んだ逞しい胸元。
驚いて見上げれば、そこには海賊らしい笑みを浮かべたマルコ。
「グララララ~」
その笑みに、満足そうに声を上げた白ひげ。
「行け、マルコ」
「よい」
「おやじ様?!」
「沙羅、船長命令だ」
「!!・・・おやじ様、ありがとう」
言いながら沙羅は白ひげの腕にぎゅっと抱きついた。
「グララ~」
白ひげは相好を崩して笑った。